読書週間を前に、本棚を一段だけ整える──元国語教師の本の手放し方

本棚の片づけは、気になる一段だけを選んで本を全部出し、「残す」「譲る」「寄贈を相談する」の三つに分けると進みます。棚全体を一度に片づけようとせず、一日一段と決めるのがこつです。読書週間を前に、七十歳の私も、本棚の一段から手をつけました。

読書週間が来ると、思い出すこと

今年も、読書週間の季節が来ます。第八十回となる今年の読書週間は、十月二十七日から十一月九日までの二週間で、標語は「静かだけど、冒険中。」です。主催は読書推進運動協議会です(二〇二六年十月二十一日、図書館の案内と業界紙の報道で確認)。

読書週間と聞くと、中学校の教室を思い出します。秋になると、図書委員の生徒が標語のポスターを廊下に貼り、学級文庫の本を入れ替えました。国語の教師だった私は、毎年この時期に「一冊紹介」の課題を出していました。好きな本を一冊選び、その本のどこが好きかを、三行で書いてもらうのです。

三行というのが、生徒には難しかったようです。長く書けば感想文になり、短すぎれば何も伝わらない。それでも、三行に絞った文章のほうが、不思議と読む人の心に残りました。

今年の標語の「静かだけど、冒険中。」は、うまい言い方だと思います。本を読んでいる人は、外から見ればじっと座っているだけです。けれども、頁の向こうでは、遠くまで旅をしている。教室で本を開いていた生徒たちの横顔を、ふと思い出しました。

さて、今年の私は、読む前に、本棚を整えることにしました。

一段だけ、全部出す

本棚の片づけは、一段だけ選んで、そこにある本を全部出すところから始めます。棚全体を一度に出すと、床が本で埋まって、戻すだけで一日が終わります。これは、台所の引き出しで学んだことです。手順は七十歳から始める、台所引き出しの片づけに書きました。

選ぶのは、いちばん気になっている一段です。私の場合は、居間の本棚の、目の高さの段でした。教師時代に買った国語教育の本と、富川(プチョン)から持ち帰った日本語教材が、混ざって詰め込まれていたのです。

出してみると、同じ本を二冊持っていたり、読みかけのまま栞が挟まっていたり、誰かに借りたまま返していなかったりする本が出てきました。引き出しの菜箸と同じで、出してみるまで、自分が何を抱えているのか分からないものです。

出した本は、畳の上に背表紙を上にして並べます。背表紙が見えると、一冊ずつ手に取って考えやすくなります。

残す本・譲る本・寄贈を相談する本

出した本は、「残す」「譲る」「寄贈を相談する」の三つに分けます。迷ったら、その本をもう一度開く日が来るかどうかを、自分に尋ねてみます。

  • 残す本:書き込みや思い出があり、もう一度読むつもりの本。教え子からもらった本も、ここに入れます
  • 譲る本:きれいな文庫や、手に取って話のできる本。フリマに持って行き、次の読み手に渡します
  • 寄贈を相談する本:地域の図書館や施設で役立ちそうな本。受け付けるかどうかや条件は、館や施設によって違いますので、持ち込む前に必ず問い合わせます

傷みのひどい本や、情報が古くなった実用書は、無理に残さず、住んでいる自治体の決まりに従って、古紙として出します。本を手放すのは、どこか後ろめたいものです。けれども、読まれずに棚で眠っているより、次の読み手のもとへ行くか、紙として生まれ変わるほうが、本にとっても幸せだと、私は考えるようにしています。

一段分を分け終えるまでに、一時間ほどかかりました。途中で何度も手が止まり、気がつけば頁をめくって読みふけっていたからです。本の片づけでは、これは避けられません。妻には「片づけているのか、読んでいるのか、どっちなの」と笑われました。

売れ残った全集の端本の行き先

今回の片づけで、もう一つ決めたかったのが、春の出店で売れ残った文学全集の端本の行き先です。全集の端本は、揃っていないと値が付きにくく、手に取ってくださる方はいても、買っていただくところまではいきませんでした。このときのことは、名古屋アンティークマーケット、二度目の出店で変えたことに書いています。

妻と相談して、次のように分けることにしました。

  1. 授業で取り上げた作家の巻は、一冊だけ残す
  2. 残りは、秋の出店にもう一度持って行く。値札の裏には、その巻で読める作品の名前を一行だけ書く
  3. それでも売れ残った巻は、寄贈を受け付けてくれる先を探す

二つ目は、春の出店で始めた「値札の裏に来歴を一行」の応用です。全集の端本は、外から見ると、どれも同じ箱に入った同じ背表紙です。けれども、中には一冊ごとに違う作家の、違う作品が入っています。その一行が、誰かの手を止めるきっかけになれば、と思っています。

一冊だけ残すと決めた巻は、教壇で何度も読み上げた作品が入っている巻です。頁の角が、ほかの巻より少しだけ柔らかくなっていました。

空いた一段に、何を置くか

本を分け終えて、残す本だけを棚に戻すと、一段の半分ほどが空きました。この空いた場所に、すぐ何かを詰めたくなるのが人情ですが、しばらくは空けておくことにしました。

棚の余白は、次に出会う本のための場所です。読書週間のあいだに、図書館や本屋で一冊、これはという本に出会えたら、そこに置こうと思っています。静かだけど、冒険中。七十歳の本棚にも、まだ冒険の余地は残っているようです。

次の休みには、二段目に取りかかります。一日一段。急がずに、ゆっくりと。

「片づける」と「仕舞う」という言葉の違いについては、noteの「片づける」と「仕舞う」──元国語教師の言葉ノートにも書いています。あわせてお読みいただければ幸いです。